農家の方々
East Farm イーストファーム
もう2年前になりますが、私たちはEast Farm Kitchenさんへ収穫体験に伺いました。
千葉県山武市ののどかな景色の中にある畑へ向かう道中から、どこか空気がやわらかく感じられたのを覚えています。
到着すると、不破さんご夫妻が自然体の笑顔で迎えてくださり、その瞬間から、なんだか肩の力がふっと抜けていくようでした。
その日は実際に畑へ入り、自分たちの手でお野菜を収穫させていただきました。
土に触れ、葉の香りを感じながら野菜を収穫していると、普段スーパーで目にしている“野菜”とはまったく違う存在に感じられてきます。
どんな土で育ち、どんな風を受け、どんな季節を越えてきたのか。
そうした背景が、ひとつひとつの野菜にちゃんと宿っているようでした。
お餅つきも体験させていただき、みんなで笑いながら杵を振る時間は、とても豊かであたたかなものでした。
便利な時代になった今、こうしてみんなで手を動かしながら食べものを囲む時間は、実はとても貴重なのかもしれません。
そして、そのあとにいただいたランチが本当に美味しくて。
採れたてのお野菜を中心にしたお料理は、どれも一口食べるごとに身体へすっと馴染んでいくような感覚がありました。
野菜そのものの甘み。
香り。
素材の力強さ。
丁寧に育てられたものには、こんなにもやさしい味が宿るのだと感じました。
East Farmの不破孝太さん・瑞穂さんご夫妻は、自然栽培の流通を経て、2010年に新規就農されました。
自然栽培というと、今では少しずつ知られるようになってきましたが、当時はまだ今以上に実践者も少なく、新規就農で取り組むには本当に大きな挑戦だったと思います。
農薬や化学肥料に頼らず、自然の力だけで育てていく自然栽培。
それは、簡単に結果の出る農業ではありません。
天候にも左右されますし、土づくりにも長い時間が必要です。
効率だけを考えれば、決して楽な道ではないと思います。
それでも不破さんご夫妻は、自然と向き合いながら、少しずつ土を育て、畑を育て、暮らしを育ててこられました。
実際にお会いして感じたのは、不破さんの持つ独特な感性です。
自然栽培をされている方というと、真面目で実直な印象を持つ方も多いかもしれませんが、不破さんはどこか“旅人”のような空気感を持っている方でした。
ヒマラヤの山をサンダルでトレッキングしてしまうような人。
そのエピソードを聞いた時、「ああ、なんだか分かる気がする」と思いました。
自然の厳しさも、自由さも、そのまま楽しんでしまうような軽やかさがあるのです。
普通なら“危ない”“大変そう”と思うようなことでも、不破さんからすると、自然の中へ身を置くことそのものが、きっと喜びなのだろうなと感じました。
そして、もともとは絵画の道を志されていたというお話も、とても印象的でした。
実際にEast Farmの空間へ行くと、その感性が随所に感じられます。
木のぬくもり。
光の入り方。
空間の余白。
畑の景色。
どれも決して“作り込みすぎていない”のに、とても美しいのです。
不破さんご夫妻が大切にされている「簡素で飾らない美しさ=用の美」という考え方が、そのまま暮らしの中に表れているように感じました。
必要以上に飾らない。
でも、丁寧に整えられている。
その空気感が、本当に心地よかったのを覚えています。
今の時代は、情報も物も溢れていて、どうしても“足す”ことばかりを考えてしまいがちです。
でもEast Farmにいると、「本当に必要なものって、実はそんなに多くないのかもしれない」と思えてきます。
土に触れること。
季節を感じること。
誰かと食卓を囲むこと。
そんなシンプルな時間の中に、豊かさがちゃんとある。
自然栽培のお野菜を育てることも、暮らしを整えることも、きっと根っこは同じなのだと思います。
自然に無理をさせすぎないこと。
自分自身にも無理をさせすぎないこと。
East Farmで流れていた穏やかな時間には、そんな感覚がありました。
あの日、畑で感じた風や土の香りを、今でも時々思い出します。
忙しく過ごしていると、つい忘れてしまいそうになる“大切な感覚”を、East Farmさんはそっと思い出させてくれる場所でした。








